2019-20年ヴロツワフ大会:12/30 昼の祈りのメッセージ
以下は、テゼのヨーロッパ大会(ポーランドのヴロツワフ)で青年たちに語られた言葉です。
ブラザー・アロイスのメッセージ
2019年12月30日(月)/昼の祈りにて
「私は、すでにそれを得たというわけではなく、すでに完全な者となっているわけでもありません。何とかして捕らえようと努めているのです。自分がキリスト・イエスによって捕らえられているからです。きょうだいたち、私自身はすでに捕らえたとは思っていません。なすべきことはただ一つ、後ろのものを忘れ、前のものに全身を向けつつ、キリスト・イエスにおいて上に召してくださる神の賞を得るために、目標を目指してひたすら走ることです。」(フィリピの信徒への手紙 3章12-14節より)
皆さんはこんな夢を見たことがありますか?走ろうしているのに、両足が重く、ゴールにたどり着かない夢です。先ほど読んだフィリピの信徒への手紙の一節で、使徒パウロは自分の存在を徒競走(レース)にたとえました。パウロにとって、前に進むことは問題ではなかったようです。
このフィリピの信徒への手紙を書いたとき、パウロは、おそらくエフェソで牢獄にいれられていたといわれています。復活されたキリストがパウロに出会い、仕えるよう召されてから20年が経っていました。パウロはそれまでに使徒として自分が達成したことを誇りに思っていたかもしれません。しかし、パウロは言います。「私はまだゴールに達していない」と。すでに成し遂げたとは自分で思っていない。「前進」し続けようとするのです。
パウロが使っている“press on”という言葉は、言葉どおりでは「後を追いかける」という意味になります。かつて自分が教会を迫害していた時にパウロがそうしていたように、迫害する者は、打ち破りたい人を追いかけて走ります。けれども、その同じ言葉は、良いものを追求する際に私たちが注ぐエネルギーのことも表すのです。聖書の詩編に「平和を求め、これを追え」(詩編13:15より)と記されているように。そして、回心したパウロが、今や自分の力の限り、キリストとの一致を追い求めているように。
20年もゴールに辿りつかないまま走り続けて、なぜパウロは苛立ちを覚えなかったのでしょうか。違いを生んだのはキリストです。パウロは言います。「私は、すでに望むものを捕まえたわけではないが、キリスト・イエスはすでに私を捕えておられる。」ここに根本的な非対称性があります。つまり、パウロは賞を獲得するためになお走り続けているのに、キリストはすでにレースを終えて、勝っているのです。神は、パウロを自分のものとされたのです。パウロだけでなく私たちも、そしてすべての人類をも。
パウロは、自分の走るテクニックの秘訣を教えてくれています。「後ろのものを忘れる」、また「前のものに全身を向ける」ということです。「後ろのものを忘れる」というのは、「ゆるし」にしばしば結びつけられる聖書のトピックです。神のゆるしは、ねじ曲がった過去の重荷から人々を自由にします。神は言われます。「わたしは再び彼らの罪に心を留めることはない」(エレミヤ書31章34節より)と。そして、最後にはさらにこう言われます。「初めからのことを思い出すな。(…)見よ、新しいことをわたしは行う。」(イザヤ書43章18-19節より)
「後ろのものを忘れる」ことを許されることが私たちの歩みを軽くします。しかし、すでに進んできた距離を忘れることは、私たちを心もとなくすることもあります。歩みを始めたばかりの、初心者、未熟者ということになるからです。4世紀の司教ニュッサのグレゴリオスは、私たちは「終わりなく、始まりから始まりへ進む」と記しています。まったく新しい始まりには、新鮮さがあります。新しい始まりは、また決してもう到達したのだといえないのだということも意味しています。
パウロの走るテクニックでは、「後ろのものを忘れる」ことの両輪となるのが、「前のものに全身を向ける」ことです。現在(いま)は重要ですが、大切なのは未来もです。現在の生活が競争で苦しみに満ちていても、後に到来するもの―キリストと共にある生活、他の人々と共に生きること―への憧れにより、その道のりは軽くされ、短くされています。
私たちは疲れて、足が重くなってきたとき、落胆しないようにしましょう。私たちはすでに何かを成し遂げた人々ではないということを認めましょう。私たちは、2020年の提言にあるように、つねに前へ進みます。私たちは今こそ、「後ろのものを忘れて」、あえて初心者になりましょう。聖霊が、私たちの心のうちに愛の炎を灯され、そのともしびによって「前のものに向かって」歩みを進めることができるように。
ブラザー・アロイス(テゼの院長)
2019年12月30日 ポーランドのヴロツワフにて
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