「テゼからの手紙2012年」(抜粋):新しい連帯に向かって
ブラザー・アロイスからの手紙2012年
「テゼからの手紙2012年」(抜粋):新しい連帯に向かって
毎年、クリスマスから元旦にかけてヨーロッパの都市で、何万人もの青年たちを迎えて開催される大会のために、テゼ共同体の院長、ブラザー・アロイスは手紙を書きます。この手紙は、年間を通じて、テゼで開かれる毎週の集いや世界各地の集いで、黙想のためのテキストとして用いられます。
今回の手紙のタイトルは「新しい連帯に向かって」。その序文の中で、ブラザー・アロイスは次のように書いています。
テゼのヨーロッパ大会が、初めてベルリンで開催されます。ベルリンは豊かな多様性を特徴とする都市です。未来に開かれた都市であると同時に、痛みに満ちた過去の記憶をそこに寄り添わせようとしています。そしてこの都市の人々は、困難な状況にも決してあきらめないことを証してきました。
人々の連帯はどんなときも欠くことができませんでしたが、それは新しい仕方で表現されることによって、絶えず刷新されもう一度若い息吹が注がれる必要があります。
ブラザー・アロイスが記すこの手紙は、50以上の言語に翻訳されます。
世界経済の大変動や地政学的な勢力の均衡の変化、増長する不平等、これらの現実を目の前にして、テゼの院長は次のように問いかけます。
「これらの事実は、生活で何をどのように選択すべきか、わたしたちがもっと見つめなおすべきであると伝えているのではないだろうか。」
以下、2012年の手紙の一部を紹介します。
家庭で、共同体で、そして町や村の中で、あらゆるレベルで、人間同士の新しい連帯が生まれるために、勇気のある決断が求められています。
連帯の新しいかたちを創りだすことを求めて、信頼の源泉を見いだすためにより大きな努力を尽くすべきときが来たのではないでしょうか。(・・・)信頼というのは、分別がなくだまされやすいということではありません。また、信頼は決して安易な言葉でもありません。それは、選択の結果であり、内なる葛藤の実りです。
貧困と不正義に直面するとき、中には暴動を起こしたり、ときには手当たり次第の暴力にかられたりすることがあります。暴力は、社会を変える道とはなりえません。しかし、その背後の根本的な理由を理解するために、憤りを示す若者たちに耳を傾ける必要があります。
新しい連帯へと向かう力は、深いところに宿る確信によって育まれます。その確信のひとつは、分かち合うことの必要性です。これは、異なる宗教の信者たち、そしてさらに信者と信仰をもたない人々とを結び合わせることができる緊急な責務なのです。
何よりもまず、信仰とは、真実にこだわることではなく、神との関係です。(・・・)神への信頼が育まれるにつれて、わたしたちの心はますます広がってゆきます。―― 世界のあらゆる場所、あらゆる文化の人々をすべて包みこみながら。わたしたちの心はまた、苦しみを軽減し、社会を前進させる可能性を持つ科学・技術を迎え入れることもできるようになります。
教会の使命は、世界中のあらゆる言語、あらゆる国々の女性、男性、そしてこどもたちをキリストの平和へ招き集めることです。教会は福音が真実を語っていることの徴(しるし)であり、聖霊によって命の息吹を与えられたキリストの体です。教会は、「交わり(コミュニオン)のキリスト」を現存させるのです。
十字架と復活によって、キリストはすべての人間の中に、新しい連帯を確立なさいました。 互いに敵対するグループとなった人類の分裂は、キリストの内にすでに克服されています。キリストの内に、すべての人がひとつの家族にされたのです。
新しいかたちの連帯を創りだし、信頼の道を開こうと模索するとき、今も、そしてこれからも、そこには試練が待っています。ときにそれは耐えられないほどの試練のように感じられるかもしれません。そのときは何をすべきでしょうか。個人的な試練においても、他の人が直面している試練においても、わたしたちは、さらに愛するという道に呼ばれているのではありませんか。
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